前回は、恐怖指数と呼ばれるVIX指数を利用したナンピン戦略について検討いたしました。
しかし、CFDを利用した方法ですので、
・取扱い可能な業者が少ない
・限月があり、トレードが難しい
・スプレッドや限月乗換時のコストが掛かる
など色々と面倒な問題もありました。
今回は、もう少し一般的に売買が行える銘柄で、システマチックにトレードをする方法が無いか検討します。
国際のETF VIX短期先物指数(1552)とは?
VIX短期先物指数(1552)はアメリカの株価指数であるS&P500のVIX短期先物指数の円換算値に連動したETF(上場投資信託)です。
ETFとは投資信託を上場することで、株式と同じように証券取引所が開いている日中に売買が可能となっている金融商品です。
ですので、VIX短期先物指数(1552)も証券会社の口座を開けば、株式と同じように売買が可能です。
また、S&P500のVIX短期先物指数に連動していますので、株価が下落する時には上昇するため、株を持っている人にとってはリスクヘッジにもなります。
では、VIX短期先物指数(1552)のチャートを見てみましょう。
何だこれは!S&P500のVIX短期先物指数の値動きとは全く違う!
そうなんです。VIX短期先物指数(1552)は、S&P500のVIX短期先物指数とは値動きが全く違います。
S&P500のVIX短期先物指数は、最安値は10程度、リーマンショック時の最高値80程度で上がったり下がったりを繰り返していましたが、VIX短期先物指数(1552)は下がり続けています。
時々、VIX短期先物指数(1552)が上昇しているのは、何らかの要因で株価が下がっている時です。
後はひたすら下がり続けています。
ちなみに2017年9月に大きく上昇していますが、これはVIXが上昇したわけでなく。株式併合によって価格が上がったためです。それからも更に下がっているので、買い持ちしていると悲惨なことになります。
この原因は、VIX短期先物指数(1552)の元は先物で、先物には限月が有るため、それぞれの限月の価格差を調整し合成された後の価格が日々の価格になるためです。
この価格調整する際に減価し価格がどんどんと下がっていきます。(実際にはかなり複雑な仕組みになっているようですが、私もそこまで理解していません。すみません!)
もちろん、株価が大きく下げた時にはVIX(1552)は上昇するので、一方的に下落するわけではありませんが、VIX(1552)は上昇しても次第に下落していきますので、結局最終的には減価の影響もあり、さらに大きく下落します。
とにかく、このVIX短期先物指数(1552)を長期で買い持ちしてはいけません。
リーマンショックでも再び来ない限り、永遠に下がり続けますので、買い持ちするとほとんどの場合大損します。
じゃあ、信用取引で売れば儲かるのでは?と思いますよね?
残念ながらこのVIX短期先物指数(1552)は信用取引を使っても、ほとんどの証券会社で売ることは出来ません。
信用売りの規制が掛かっています。また売れる証券会社でも、日中しか売れないとか、コストが掛かるとかで上手くいきません。
つまりVIX短期先物指数(1552)は買い持ちも売りも出来ないのです。どうすれば良いのでしょうか?
VIX短期先物指数(1552)の売買検証
ひたすら下がり続けているVIX短期先物指数(1552)ですが、次のような売買を行った場合の損益を検証してみます。
<取引ルール>
・朝の寄付きで買い、大引けで売り
・損切りなし
単純に毎日日中買いを行うだけです。
ポイントは「ポジションを次の日に持ち越さない」です。
次の日にポジションを持ち越すと減価し、次の日には大きく値段を下げる可能性があるからです。
ですから必ず大引けで決済を行います。
この時の累積損益曲線が下記です。
おおおっ、下落していません!
あの永遠に下落し続けるグラフからは想像もできませんが、下落していません。むしろ上昇しています。
つまり日中は上がることが多いという事でしょう。
しかし、曲線が歪です。この原因はVIX短期先物指数(1552)の価格が10000円くらいから、100円割れまでと差が激しいからです。
従って、価格差を調整する必要があります。
そこで、5万円の資金でVIX短期先物指数(1552)を売買すると想定して、5万円の範囲で売買する株数を調整して検証します。
例えば、株価が10000円の時は、5枚を売買する、株価が100円の時は500枚を売買することとします。
また、毎日買うだけでは面白くないので、前日下がれば(前日陰線なら)次の日に買う事にします。
<取引ルール>
・資金を5万円として枚数を調整する
・前日下がれば(前日陰線なら)寄付きで買う
・大引け決済
・損切りなし
このルールで売買した結果が下記です。
買いのみの場合(青線)も併記しました。
綺麗な右肩上がりです。
特に「前日陰線で買い」では累積損益曲線が右肩上がりの直線状になっています。
この検証結果の評価が下記の通りです。
両方ともなかなか良い結果ですが、特に「前日陰線で買い」では、勝率もシャープレシオも良くなっています。
各年の利益も載せます。
両方とも2011年以来負けた年は有りません。
かなり良好な結果です。
但し、買いのみの場合はドローダウンも大きく、損益に幅が有るのでそれ相応のリスク管理が必要でしょう。
最後に(課題など)
VIX短期先物指数(1552)を利用したシステムトレード手法について検討しました。
その結果非常に良好なシステムを作成することが出来ました。
但し、次のような課題もあります。
・損切りが無い
・手数料が考慮されていない
・株式と同様にレバレッジが掛けられない
損切りについては、どの程度が適当か検証が必要と思います。
また手数料については、株式で安く使い勝手の良い証券会社を探す必要がありそうです。
次の日にポジションを持ち越さないように気を付ける必要もあります。
レバレッジはどうしようもないですが、信用取引を活用することで少しでも資金効率を高めることが出来るでしょう。
今回の戦略は、常に買い持ちで仕掛けるので、株が暴落した時のヘッジにも活用できると思います。
是非、ご参考にしてください。