映画「海よりもまだ深く」は、2016年に公開された是枝裕和監督作品です。

 

探偵社に勤める売れない作家の良多(阿部寛)と団地に一人で住む母(樹木希林)や、離婚した妻(真木よう子)・別れて住む息子(吉澤太陽)との人間模様を描いています。

良多(阿部寛)はギャンブル好きで常にお金に困っており、物語の中で父の形見の硯を手に入れますが、これを売ってしまったのか気になります。

また良多(阿部寛)の探偵社の後輩の町田健斗(池松壮亮)が良多に対して「借りがある」と話しています。この「借りがある」とは何のことなのでしょうか?

 

 



良多は硯を売らなかったの?

良多(阿部寛)はギャンブル好きな上に、離婚後の慰謝料支払いがなかなかできずに常にお金に困っています。

母(樹木希林)の団地に来ては、お金になりそうな品物を漁っていますが、父の使っていた硯を仏壇の横で見つけます。

その硯について質屋の店主は「30かなあ」と言いますが、これは30万円のことでしょう。かなりの高額ですね。

↓かなりの高級品だった父の硯。

(引用元:映画「海よりもまだ深く」© 2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ)

 

映画では、父の形見の硯を良多(阿部寛)が売ったか売らなかったかについて直接的に言及しているシーンはありません。

映画を見た人が、良多(阿部寛)の今後について自由に考える余地を残しているのでしょう。

 

但し、良多(阿部寛)が駅で待っている元妻と息子のもとに戻った際には、片方の手に紫色の風呂敷包みを抱えています。

電車の中でも良多(阿部寛)はその風呂敷包みを大事そうに持っていますので、恐らく硯を売らずに父の形見として大事に持っているのではないかと推測します。

質屋で店主から、自分が書いた本を父がただで近所に嬉しそうに配っていたと聞かされて、硯を売るに売れなくなったのでは無いでしょうか。

 



ところで、硯はそんなに高価なのでしょうか?

↓例えば歙州(きゅうじゅう)硯は高価とのことです(映画で出ていた硯が歙州硯というわけではありません)。

 

価格.comで歙州硯の値段を調べますと、高いものでは40万円くらいするものがあります。

 

硯も良いものになると何十万円もするものがあるのですね。

 



借りがあると町田は言ったが何のこと?

↓探偵社に勤める良多(阿部寛・右側)の後輩が、町田健斗(池松壮亮・左側)です。

 

良多(阿部寛)とその後輩の町田(池松壮亮)が高校生をカツアゲするために待っている間に交わしたのが次の会話です。

町田(池松壮亮)「俺、良多さんには借りあるから」

良多(阿部寛)「借り?何?」

町田(池松壮亮) 「いや、覚えてないから」

 

息子に会うために金策に回る良多(阿部寛)に、町田(池松壮亮)は根気良く付き合います。

その理由が、「良多(阿部寛)さんには借りがあるから」なのです。

その借りの意味については次の様に推測します。

 

町田(池松壮亮)も子供の頃に両親が離婚し、父親と別れています。

町田(池松壮亮)は、小3の時に別れた父に買ってもらったグローブを今でも大切にしており、自分が20歳になった時に父に会いに行った話もしています。

離婚した後も息子に会うために金策に駆け回る良多(阿部寛)を見て、町田(池松壮亮)は別れた自分の父親の優しさや子を想う気持ちを感じることができることを有り難いと思っているのでしょう。

 

 

今回は、映画「海よりもまだ深く」について、良多(阿部寛)は硯を売ったのかや、町田(池松壮亮)が「良多(阿部寛)さんには借りがあるから」と話したことについて意味を考察しました。

物語は淡々と進みますが、人生について考えさせられる、かなり深い意味をもつ映画でした。

良多(阿部寛)は映画で語られた物語のあと、どんな人生を送るのでしょうか?

ゆっくりとその後の物語を考えてみるのも映画の醍醐味で楽しいですね。

 

この記事がお役に立ちましたら幸いです。